ボストンでのマインドフルネス&コンパッションとの出逢い(1)

ハーバード公衆衛生大学院 Harvard School of Public Health (HSPH)への留学のために住み始めた米国マサチューセッツ州の地。

私はHSPHを修了してからハーバード大学関連病院チルドレンホスピタルボストン Children’s Hospital Boston を経てマサチューセッツ総合病院 Massachusetts General Hospital (MGH) で働きながら、MGHのBenson Henry Institute for Mind Body Medicineでクリパルヨガ (Kripalu Yoga)やヨガニドラ、ハーバード大学のウェルネスセンター(Harvard University Center for Wellness、現Center for Wellness and Health Promotion https://wellness.huhs.harvard.edu)で、自分自身のためにマインドフルネス瞑想を学んでいました。

(ボストン・チャールズ川)

その後、外傷性脳損傷を患ってからは、脳の損傷を修復するために仕事や家事を完全に休んで薄暗い部屋で脳をひたすら休める治療へ。その後、同大学病院の外傷性脳損傷専門医や、毎週のリハビリ治療でお世話になった外傷性脳損傷専門の理学療法士や言語療法士らから「瞑想をするように」と診察時に指示を受けることとなりました。

ボストンは、アメフトの全米チャンピオンにも輝くNFLチーム ニューイングランドペイトリオッツもいて、また退役軍人への支援も熱心に行われているところ。スポーツ選手や退役軍人、またボストンマラソン爆破事件の被害者などにもかかわる外傷性脳損傷の臨床や研究がおこなわれていて、頭部外傷への認識が米国の中でも深い地域だと思います。脳の画像を用いた瞑想の研究で一躍インパクトをもたらしたSara Lazar神経学者(ハーバードメディカルスクール/マサチューセッツ総合病院)もいらしたり、マインドフルネスストレス低減法 (MBSR) の発祥の地でもあったり、医療従事者もマインドフルネス瞑想の最新情報に触れる土壌があります。

薄暗い部屋で、会話やメールなども完全に休んでいる私は横になったまま、再生スピードをかなり遅く設定して、音量をできるだけ小さくして、何か月もの間、マインドフルネス瞑想のガイダンスを聴きながら静かにゆっくりと瞑想を重ねていました。本を読んだり画面を観たり音楽を聴いたりすることはできません。

マインドフルネスを長く指導なさっているJack Kornfield博士やTara Brach博士の瞑想ガイドや朗読だけをゆっくりと聴きます。そこから流れてくる言葉だけを、ただ聴くことだけが精一杯で、ほかのことを考えたりできる脳の機能状態ではないため、耳から入ってくる一語一句のもつ深遠さがそのまま心にしみわたります。

(マサチューセッツ総合病院)

朝目が覚めて、起き上がろうとするときも、自分に「さぁ起きよう」と、また、何かを考えるときには、「さぁこれから思考を頭に浮かべようね」とそっと、忍耐強く号令をかけて、からだを動かし、思考を動かしてみます。ひとつひとつの動作をすることは、もはや自動的にできてしまうことではありません。

歯を磨くー。「さぁ歯を磨こう」と意識し、自分に話しかけ「やってみよう」と優しく励ます。そして、歯を磨くには、まず歯ブラシがいるんだことを認識する、歯ブラシを目にし、歯ブラシを認識する、手を動かして「さぁとろう」、そして動かす、目でも追う、触る。ひとつひとつを意識して、ひとつのことだけ、わずかにがんばってくれている脳のエネルギーや機能を使いながらなんとか行う。歯磨きが1日の中でできる精一杯の脳の認知活動で、あとはまた脳の損傷の修復のためひたすら頭を休める。

当たり前だった日常のちょっとした動作。「頭もつかっていない単純作業」だとこれまでは思いこんでいた作業。普段のスピードで、普段の量の会話をすることも、果てしなく遠い−−。

「さぁ、今からひとつの言葉を思い浮かべ考えよう」というときも自然には思考は漂わず、努力がいります。そのため、瞑想をしていて、勝手に考え事や言葉が浮かんだときには、「あぁ、脳の損傷が少しずつ回復して、マインドがさまよえる力がよみがえってきた!」と、脳のその機能に感謝、感激したほどです。

 

(文・写真 Sanae Kishimoto)

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